相続した実家は誰が貸せる?
権利関係と共有者調整の準備
相続した実家を貸すときは、募集条件より先に、誰が契約できるかを確認します。この記事の範囲は賃貸オーナー向けの権利確認と共有者調整で、分譲マンションの管理組合・入居者向けは対象外です。
- 結論
相続した実家を貸す前に、権利資料と賃貸条件案をそろえます。誰が契約できるか、どの同意が必要かを専門家に確認し、回答と承認記録を保管します。
- 相談前に整理すること
- 登記名義、遺言・遺産分割の進捗、相続人・持分の確認資料
- 予定する契約方式・期間・改修内容と、必要な同意の不明点
- 家賃の受取窓口と配分、修繕費負担、承認方法と連絡担当
- 未決事項も相談資料になる
合意前でも、確認できた事実と各共有者の希望を分けて相談表に記入します。不明点には確認先と資料を集める担当を書き、相談時に持参します。
01実家の管理と貸す権限を分けて確認する

登記名義と相続手続きの進捗を整理する
最初に、土地と建物の登記事項証明書を確認します。名義人や共有持分を読み取り、手元の相続資料と照合します。土地と建物で名義が異なる場合も、別々に記録します。
登記が亡くなった方の名義のままなら、相続手続きの進捗も書き添えます。遺産分割の話合い中か、合意済みで登記の準備中かを記入し、手続きを担当する人の連絡先を添えます。
登記を終えている場合は、貸主になる予定の人と、契約書に署名する予定の人を書き出します。登記名義人と異なる場合は、その理由と委任関係を確認する資料を添えます。
遺言・遺産分割と相続人・持分の資料をそろえる
遺言書や遺産分割協議書があれば、対象の実家に関する内容を確認します。資料が見つからない場合は、存在が不明なのか、保管先が分からないのかを相談表に記入します。
| 資料 | 確認したいこと | 相談時に添える情報 |
|---|---|---|
| 土地・建物の登記事項証明書 | 名義人、持分、対象不動産 | 取得時点と、その後の手続きの有無 |
| 遺言書・遺産分割協議書など | 実家の承継に関する記載 | 手続きの進捗と、内容に不明点がある箇所 |
| 戸籍関係の資料・相続関係の整理メモ | 相続人を確認するための情報 | 資料が不足している人や関係が不明な点 |
相続人や持分は、家族の記憶だけで確定させないようにします。資料に食い違いがあれば、該当箇所を相談表に転記します。登記手続きは司法書士などへ、権利の争いは弁護士へ相談します。
各人の立場は、所有者・貸主・管理会社の役割を参照して整理します。相談表には氏名と役割を併記し、未確認の役割には「確認中」と記入します。
02予定する契約から必要な同意を確認する

契約方式・期間・改修内容をまとめる
共有状態の実家では、「貸すことに賛成か」だけでは確認が足りない場合があります。契約方式や期間、改修内容を条件案に記入し、共有者へ同じ案を渡します。
民法では、共有物の管理と変更で扱いが異なります。予定する賃貸や工事に必要な同意は、内容によって異なります。賛成する人数だけで判断せず、持分の資料も条件案に添えます。
| 予定する内容 | 共有者に示す情報 | 確認を残す点 |
|---|---|---|
| 契約方式 | 普通借家か定期借家かという候補 | 方式に応じた要件と終了時の扱い |
| 契約期間 | 開始時期、期間、将来の利用希望 | 必要な同意と、契約終了条件との整合 |
| 改修内容 | 工事箇所、目的、見積書や図面 | 工事への同意、発注権限、費用負担 |
将来は家族が使いたい場合、利用を希望する時期も条件案に記入します。普通借家では、期間満了だけで貸主が自由に終了させられるとは限りません。更新拒絶などの条件を弁護士に確認します。
定期借家を候補にする場合は、契約方式と事前説明の要件を確認します。期間満了時の通知の要否も、予定する契約期間を示して確認します。必要な手続きを条件案に書き添えます。
代表窓口と契約権限を分けて専門家に確認する
共有者間で連絡担当を決めても、その人に契約権限まで与えたことになるとは限りません。見積りを受け取る担当、条件を調整する担当、契約に署名する人を分けて記入します。
代理で契約する予定なら、誰から何を委任されるかを弁護士などに確認します。委任状の要否と記載内容を確認し、委任する契約条件と代理人の権限を資料に残します。
専門家には、相続資料と賃貸条件案を一緒に渡します。「誰の同意を、どの内容について、どう残すか」を質問します。条件を変更した際に再確認が必要かも聞いておきます。
共有者間の連絡ルールは、法的に必要な同意や代理権を置き換えるものではありません。連絡が取れない人や意見の相違がある場合は、その氏名と経緯を相談表に記入します。
03共有者間のお金と判断の分担を記録する

家賃の受取窓口・配分と修繕費負担を整理する
家賃を受け取る口座と、収入を誰にどう配分するかは別の事項です。代表者の口座を使う場合も、口座名義、配分の根拠、送金先をそれぞれ文書に残します。
相続手続き中の家賃の扱いが不明なら、発生した期間と入金記録をまとめます。遺産分割の結果だけで配分を決めず、誰に帰属する収入かを弁護士などに確認します。
修繕費は、負担する人と一時的に立て替える人を分けて記録します。家賃から差し引く場合は、対象費用と精算方法について合意を残します。明細の保管担当と報告先も記入します。
| 項目 | 合意内容 | 未決事項 |
|---|---|---|
| 家賃の受取窓口 | 受取口座、入金確認の担当を記入 | 口座名義や管理会社への指示方法 |
| 収入の配分 | 配分の根拠、対象期間、送金方法を記入 | 相続手続き中の家賃の扱い |
| 修繕費の負担 | 負担方法、立替担当、精算方法を記入 | 資金が不足した場合の対応 |
| 修繕の承認 | 承認者、確認方法、記録の保管先を記入 | 緊急時や返答がない場合の対応 |
| 管理会社への連絡 | 通常の担当と不在時の連絡先を記入 | 担当変更時の通知方法 |
表は編集部による相談用の整理例です。国交省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」の委託業務・費用・報告に関する項目を参考にしています。共有者間の配分を定める書式や、相続手続きの公的書式ではありません。
修繕の承認方法と管理会社への連絡担当を決める
修繕の承認では、見積書を誰に送り、誰の回答を待つかを決めます。担当者が共有者の意見を集める場合は、管理会社へ最終回答を返すまでの流れも記録しておきます。
緊急の不具合は、通常の設備交換と分けて相談します。連絡がつかない場合に管理会社が行える措置と、事後報告の方法を確認します。合意した内容を管理委託契約書案と照合します。
管理会社への最終回答は、決めた連絡担当から送ります。回答の根拠となる承認記録を保管し、担当変更時に引き継ぎます。新しい担当者の氏名と連絡先も管理会社へ通知します。
委託する業務は、戸建て賃貸の管理会社に確認することを参照して選びます。相談表を管理会社に渡し、依頼する業務と共有者側に残る作業を確認します。
04募集前の未決事項を相談表にまとめる

確認資料・相談先・回答を残す
未決事項は、「相続が未完了」という一言でまとめず、質問に分けます。「貸主は誰か」「署名者に代理権があるか」などと記入します。各質問に相談先と持参資料を対応させます。
| 確認したいこと | 持参する資料・相談先 | 回答後に残すこと |
|---|---|---|
| 相続人・持分・登記手続き | 相続資料と登記資料/司法書士・弁護士など | 確認結果、不足資料、次に行う手続き |
| 賃貸への同意と契約権限 | 賃貸条件案、改修案、委任関係の資料/弁護士など | 必要な同意、権限の範囲、確認条件 |
| 委託範囲と修繕の連絡手順 | 共有者間の相談表、管理委託契約書案/管理会社 | 担当、承認方法、報告方法、残る課題 |
相談後は、回答日と回答者、確認した契約案の版を記録します。条件付きの回答なら、その条件も省略しません。共有者へ記録を渡し、異なる理解や追加の質問があれば返信してもらいます。
資料不足で結論が出ない場合は、次に集める資料と担当を決めます。持参物をそろえる際は、管理委託の相談前に確認する事項も参照します。
権限と合意を確認して募集準備へ進む
募集前には、貸主の表示、署名者の権限、必要な同意の記録を照合します。承認された条件案と募集原稿を並べ、違いがある箇所を確認します。変更点は、権限のある人に再確認してから反映します。
現地確認や見積りの相談時には、相談表の未決事項を管理会社に伝えます。広告掲載、工事発注、契約締結について、それぞれ承認者と承認の記録方法を記入します。
募集準備の具体的な手順は、家を貸す流れを参照します。各作業の担当を決め、承認待ちの作業には着手前の確認先を書き添えます。
05当社でできること・できないこと
できること
- 管理をお引き受けする(全国/管理料は月額賃料の5%・税別・最低管理料なし)
できないこと
- 現地・室内を見ずに、実際の賃料を確定させること
- 空室が必ず埋まると保証すること
- 個別案件の相続人・持分・必要な同意を確定すること
いまの管理で見落とされている点を、物件単位で確認できます
お預かりした物件情報をもとに、いま何が起きているか、どこまで手を入れるべきか、持ち続けるか売るかまで整理して、A3一枚にしてお送りします。費用はかかりません。
LINEで管理の相談 管理のご依頼をいただかなくても構いません。対応エリアは全国です。区分マンション・戸建ては全国どこでもご相談いただけます。一棟は清掃・巡回・修繕の手配先を組んでから管理を開始します。権利関係・共有物の管理と変更の確認根拠:民法。契約方式・期間・終了条件の確認根拠:借地借家法。委託業務・費用・報告事項の整理の参考:国土交通省「賃貸住宅標準管理受託契約書」。相談表は編集部による整理例です。業務の範囲・報酬・報告の頻度は管理委託契約書によって異なります。実際の判断はご自身の契約書をご確認ください