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GUIDE / 修繕とお金の判断

原状回復は、
どこまでがオーナー負担なのか

公開日:2026年9月7日 更新日:2026年9月7日 Lincloud Owners 編集部(宅地建物取引士)

退去のたびに揉めるのが原状回復です。国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という考え方を示していて、実務はおおむねこれに沿って動いています。ここでは、その線引きを書きます。

この記事の結論
結論

原則は「通常の使い方でついたもの・時間の経過で古くなったものはオーナー負担」です。入居者が負担するのは、通常の使い方を超えた汚れや壊れに限られます。さらに経過年数に応じて、入居者の負担割合は下がります。

オーナー負担になるもの(例)
  • 日焼けによるクロスや畳の変色
  • 家具を置いたことでできた床のへこみ
  • 画鋲・ピンの穴(下地に達しない程度)
  • 設備の寿命による故障
  • 次の入居者のためのハウスクリーニング(特約が無い場合)
入居者負担になりうるもの(例)
  • たばこのヤニ・においがクロス全体に及んでいる
  • 掃除をしていなかったことによる水回りのカビ・水垢
  • ペットによる傷・におい(ペット可でも、通常を超える部分)
  • 落書き、釘穴、下地まで届く傷
確定しないこと

ガイドラインは法律そのものではなく、判断の目安です。契約書に有効な特約があれば、そちらが優先されることがあります。実際の判断は契約内容によります。

01考え方の土台

国土交通省のガイドラインは、原状回復を「賃借人の故意・過失、通常の使用を超える使用による損耗を元に戻すこと」と定義しています。つまり「入居時の状態に完全に戻すこと」ではありません。

区分中身負担
経年変化時間が経てば当然起きること(日焼け・設備の寿命)オーナー
通常損耗普通に住んでいれば起きること(家具のへこみ・軽い傷)オーナー
それを超えるもの不注意・手入れ不足・用法違反入居者
オーナーが受け取る賃料には、もともと経年変化と通常損耗の分が織り込まれているという考え方です。だから二重には請求できません。

02経過年数で、負担は下がっていく

入居者が負担すべき場合でも、その設備が何年使われていたかで負担割合が下がります。クロスなら6年で残存価値が1円になる、という考え方が使われます。

入居年数クロスの入居者負担(考え方)
1年で退去おおむね8割程度
3年で退去おおむね5割程度
6年以上で退去1円(ほぼ負担なし)

つまり長く住んでもらうほど、退去時にオーナーが負担する割合は増えます。ただしそのぶん空室期間が無いので、収支としては長期入居のほうが有利になるのが普通です。

経過年数の考え方が使われるのはクロス・床材・設備などです。ハウスクリーニングや、部分的な補修には当てはめないのが一般的です。

03実務で揉めやすいところ

揉めやすい箇所考え方
たばこのヤニにおいや変色が通常を超えていれば入居者負担。ただし経過年数は考慮する
ハウスクリーニング特約が無ければオーナー負担が原則。特約がある場合も、金額が明示されている必要がある
鍵の交換次の入居者のためならオーナー負担。紛失なら入居者負担
エアコンの内部洗浄通常使用の範囲ならオーナー負担
フローリングの全面張替え一部の傷で全面を請求するのは難しい
特約は「書いてあれば何でも有効」ではありません。内容が明確で、入居者が理解して合意していることが求められます。

04揉めないための備え

  1. 入居時に、室内の写真を撮って双方で保管する(いちばん効きます)
  2. 契約書の特約は、対象と金額を具体的に書く
  3. 退去の立会いは、できるだけ入居者と一緒に行う
  4. 見積もりは、項目・数量・単価に分けて出してもらう
  5. 経過年数を反映した金額かどうかを確認する

とくに1つ目の入居時の写真は、あとから用意できません。ここだけは先にやっておく価値があります。

05オーナー負担の工事も、収支としては投資になる

オーナー負担の原状回復は「取られるお金」に見えますが、次の募集に直結する費用でもあります。

工事費用の目安家賃8万円なら空室何か月分
ハウスクリーニング2.1〜2.4万円約0.3か月
クロス張替(1K)約6〜8万円約1か月
温水洗浄便座・洗面台3.5〜5.6万円約0.6か月
エアコン交換8.5〜14.5万円約1.5か月

空室が1か月続けば8万円が失われます。「工事費が空室何か月分にあたるか」で見ると、判断しやすくなります。

06よくある質問

ハウスクリーニング代を入居者に負担してもらう特約は有効ですか

特約自体は使われていますが、金額が明示されていること、入居者が内容を理解して合意していることが前提になります。「実費」とだけ書いてあると争いになりやすいところです。

6年住んだ入居者にタバコのヤニがあった場合、請求できませんか

クロスの経過年数を考えると、張替え費用そのものはほとんど請求できません。ただし下地の処理や消臭など、経過年数の考え方が当てはまらない部分については、別に判断されることがあります。

敷金から差し引くとき、明細は必要ですか

必要です。項目・数量・単価に分けた明細を出してください。明細のない一括請求は、後から説明できません。

07当社でできること・できないこと

できること

  • 退去時の見積もりについて、経過年数の考え方に沿っているかを一緒に確認する
  • 工事の費用が、空室何か月分にあたるかを整理してお渡しする
  • 管理をお引き受けする(全国/管理料は月額賃料の5%)

できないこと

  • 個別の争いについて、法律上の判断を示すこと(弁護士の領域です)
  • 契約書の特約が有効かどうかを断定すること
  • 入居者との交渉を、オーナーに代わって最終決定すること
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この記事について
原状回復の考え方は、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にもとづく一般的な整理です。ガイドラインは法律そのものではなく判断の目安であり、実際の判断は契約内容と個別の事情によります。工事費用は公開されている費用資料にもとづく目安です。