原状回復は、
どこまでがオーナー負担なのか
退去のたびに揉めるのが原状回復です。国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という考え方を示していて、実務はおおむねこれに沿って動いています。ここでは、その線引きを書きます。
- 結論
原則は「通常の使い方でついたもの・時間の経過で古くなったものはオーナー負担」です。入居者が負担するのは、通常の使い方を超えた汚れや壊れに限られます。さらに経過年数に応じて、入居者の負担割合は下がります。
- オーナー負担になるもの(例)
- 日焼けによるクロスや畳の変色
- 家具を置いたことでできた床のへこみ
- 画鋲・ピンの穴(下地に達しない程度)
- 設備の寿命による故障
- 次の入居者のためのハウスクリーニング(特約が無い場合)
- 入居者負担になりうるもの(例)
- たばこのヤニ・においがクロス全体に及んでいる
- 掃除をしていなかったことによる水回りのカビ・水垢
- ペットによる傷・におい(ペット可でも、通常を超える部分)
- 落書き、釘穴、下地まで届く傷
- 確定しないこと
ガイドラインは法律そのものではなく、判断の目安です。契約書に有効な特約があれば、そちらが優先されることがあります。実際の判断は契約内容によります。
01考え方の土台
国土交通省のガイドラインは、原状回復を「賃借人の故意・過失、通常の使用を超える使用による損耗を元に戻すこと」と定義しています。つまり「入居時の状態に完全に戻すこと」ではありません。
| 区分 | 中身 | 負担 |
|---|---|---|
| 経年変化 | 時間が経てば当然起きること(日焼け・設備の寿命) | オーナー |
| 通常損耗 | 普通に住んでいれば起きること(家具のへこみ・軽い傷) | オーナー |
| それを超えるもの | 不注意・手入れ不足・用法違反 | 入居者 |
02経過年数で、負担は下がっていく
入居者が負担すべき場合でも、その設備が何年使われていたかで負担割合が下がります。クロスなら6年で残存価値が1円になる、という考え方が使われます。
| 入居年数 | クロスの入居者負担(考え方) |
|---|---|
| 1年で退去 | おおむね8割程度 |
| 3年で退去 | おおむね5割程度 |
| 6年以上で退去 | 1円(ほぼ負担なし) |
つまり長く住んでもらうほど、退去時にオーナーが負担する割合は増えます。ただしそのぶん空室期間が無いので、収支としては長期入居のほうが有利になるのが普通です。
経過年数の考え方が使われるのはクロス・床材・設備などです。ハウスクリーニングや、部分的な補修には当てはめないのが一般的です。
03実務で揉めやすいところ
| 揉めやすい箇所 | 考え方 |
|---|---|
| たばこのヤニ | においや変色が通常を超えていれば入居者負担。ただし経過年数は考慮する |
| ハウスクリーニング | 特約が無ければオーナー負担が原則。特約がある場合も、金額が明示されている必要がある |
| 鍵の交換 | 次の入居者のためならオーナー負担。紛失なら入居者負担 |
| エアコンの内部洗浄 | 通常使用の範囲ならオーナー負担 |
| フローリングの全面張替え | 一部の傷で全面を請求するのは難しい |
04揉めないための備え
- 入居時に、室内の写真を撮って双方で保管する(いちばん効きます)
- 契約書の特約は、対象と金額を具体的に書く
- 退去の立会いは、できるだけ入居者と一緒に行う
- 見積もりは、項目・数量・単価に分けて出してもらう
- 経過年数を反映した金額かどうかを確認する
とくに1つ目の入居時の写真は、あとから用意できません。ここだけは先にやっておく価値があります。
05オーナー負担の工事も、収支としては投資になる
オーナー負担の原状回復は「取られるお金」に見えますが、次の募集に直結する費用でもあります。
| 工事 | 費用の目安 | 家賃8万円なら空室何か月分 |
|---|---|---|
| ハウスクリーニング | 2.1〜2.4万円 | 約0.3か月 |
| クロス張替(1K) | 約6〜8万円 | 約1か月 |
| 温水洗浄便座・洗面台 | 3.5〜5.6万円 | 約0.6か月 |
| エアコン交換 | 8.5〜14.5万円 | 約1.5か月 |
空室が1か月続けば8万円が失われます。「工事費が空室何か月分にあたるか」で見ると、判断しやすくなります。
06よくある質問
ハウスクリーニング代を入居者に負担してもらう特約は有効ですか
特約自体は使われていますが、金額が明示されていること、入居者が内容を理解して合意していることが前提になります。「実費」とだけ書いてあると争いになりやすいところです。
6年住んだ入居者にタバコのヤニがあった場合、請求できませんか
クロスの経過年数を考えると、張替え費用そのものはほとんど請求できません。ただし下地の処理や消臭など、経過年数の考え方が当てはまらない部分については、別に判断されることがあります。
敷金から差し引くとき、明細は必要ですか
必要です。項目・数量・単価に分けた明細を出してください。明細のない一括請求は、後から説明できません。
07当社でできること・できないこと
できること
- 退去時の見積もりについて、経過年数の考え方に沿っているかを一緒に確認する
- 工事の費用が、空室何か月分にあたるかを整理してお渡しする
- 管理をお引き受けする(全国/管理料は月額賃料の5%)
できないこと
- 個別の争いについて、法律上の判断を示すこと(弁護士の領域です)
- 契約書の特約が有効かどうかを断定すること
- 入居者との交渉を、オーナーに代わって最終決定すること
その修繕費が何か月で回収できるか、先に整理できます
お預かりした物件情報をもとに、いま何が起きているか、どこまで手を入れるべきか、持ち続けるか売るかまで整理して、A3一枚にしてお送りします。費用はかかりません。
LINEで相談を始める 管理のご依頼をいただかなくても構いません。対応エリアは全国です。区分マンション・戸建ては全国どこでもご相談いただけます。一棟は清掃・巡回・修繕の手配先を組んでから管理を開始します。原状回復の考え方は、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にもとづく一般的な整理です。ガイドラインは法律そのものではなく判断の目安であり、実際の判断は契約内容と個別の事情によります。工事費用は公開されている費用資料にもとづく目安です。