家賃の値上げ、大家側の対応
断られた後の確認と進め方
家賃の値上げを断られたら、再通知の前に回答と入金記録を確認します。契約と根拠資料をそろえ、管理会社に依頼する担当業務を決めます。この記事の範囲は入居中の家賃増額を考える賃貸オーナー向けの対応で、分譲マンションの管理組合・入居者向けは対象外です。
- 結論
拒否の回答だけで対応を決めず、契約・増額の根拠・支払状況を確認します。管理会社に依頼できる業務を照合し、契約の解釈や請求の効力に争いがあれば弁護士へ相談します。
- 最初にそろえるもの
- 賃貸借契約書と、賃料について取り交わした合意書
- 増額の提案・通知と根拠資料、借主からの回答
- 対象月ごとの入金記録と、協議の経過をまとめたメモ
- 支払いの見方
増額分の争いと、従前賃料の未入金を分けて記録します。差額の請求や退去を求める対応に進む前に、契約と支払状況を弁護士に確認してもらいます。
01値上げを断られたら、まず何を確認するか

拒否の回答と、これまでの協議を保存する
まず、借主からの回答を原文のまま保存します。管理会社が電話で受けた回答なら、受けた日時と担当者、借主の説明を記録してもらいます。
回答を読み、金額への異論か、開始時期の相談か、根拠の確認かを書き分けます。理由が示されていない場合は推測で補わず、次の連絡で確認する事項に加えます。
貸主側が送った提案や通知も、添付資料を含めて保存します。希望額と適用を求めた時期、送付先、到達を確認できる記録を一緒に残します。
増額分の争いと通常の滞納を分けて考える
次に、対象月ごとの入金額と入金日を確認します。家賃と共益費などの内訳も照合し、増額分の差額と従前賃料の未入金を別の欄に記録します。
借地借家法第32条第2項は、増額協議が調わない場合の支払いを定めています。増額を正当とする裁判が確定するまでは、借主が相当と認める額を支払えば足りるとしています。
裁判確定時に支払済みの額が不足していれば、不足額の精算が必要です。同項では、不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付すと定めています。
増額の争いとは別に入金が途絶えている場合は、その対象月と金額を抽出します。未入金の確認と連絡は、家賃滞納時の対応手順を参照してください。
02契約と賃料を見直す根拠を整理する

賃料改定条項と増額しない特約を確認する
契約書では、賃料改定の条項と特約を併せて読みます。締結時の契約だけでなく、その後の更新書類や賃料変更の合意書も確認します。
第32条第1項では、一定期間増額しない特約がある場合、その定めに従います。該当する条項と対象期間を書き出し、今回の増額希望時期が期間内か確認します。
更新時期を迎えるだけで、希望額への変更が決まるわけではありません。改定条項に記載された条件と今回の事情を並べ、解釈が分かれる箇所を弁護士に示します。
管理会社の保管分と手元の書類に違いがあれば、締結済みのものを確認します。保管方法は、賃貸借契約書の作成・保管を参照してください。
定期建物賃貸借では、第38条により、賃料改定に係る特約がある場合は第32条が適用されません。特約がなければ第32条の適用を検討します。該当するか判断に迷う条項は、全文を弁護士に確認してもらいます。
税負担・経済事情・近傍同種の賃料資料をそろえる
第32条第1項は、税負担や経済事情の変動、近傍同種の賃料との比較を要件としています。これらにより賃料が不相当となった場合、将来に向かって増減額を請求できる規定です。
現在の賃料を定めた時期と経緯を確認し、その時点と現在を比較できる資料を集めます。各資料に対象期間と出典を記し、増額理由として説明する変化に印を付けます。
| 資料 | 確認する点 | 不足情報 |
|---|---|---|
| 契約書・賃料変更の合意書 | 現行賃料の決定時期と改定条件 | 特約の別紙や過去の合意書の有無 |
| 固定資産税等の通知書 | 土地・建物の負担額とその変化 | 比較する時期と対象範囲 |
| 経済事情に関する資料 | 土地・建物価格などの変化と対象物件への関係 | 出典と比較時点が分かる情報 |
| 近傍同種の賃料資料 | 立地・面積・築年・設備などの条件 | 募集額か成約額か、共益費の内訳 |
| 修繕の明細・実施記録 | 工事内容と建物の状態の変化 | 他の根拠資料との関係 |
募集賃料は、実際に合意された賃料と一致するとは限りません。管理会社には、比較対象を選んだ理由と条件の違いを資料に追記してもらいます。
修繕費の増加だけで、増額の妥当性が決まるわけではありません。工事明細を維持修繕と設備の変更に分け、賃料への影響を他の資料と併せて専門家に確認します。
03管理会社に頼む仕事と相談先を分ける

資料収集・提案の伝達・回答記録の担当を決める
管理会社には、資料収集と借主への連絡が委託業務に含まれるかを確認します。対応できる範囲と追加費用の有無を、締結済みの管理委託契約書と照合します。
国土交通省の標準管理受託契約書は、業務内容や実施方法を記載する構成です。照合の参考にし、実際の契約で記載がない仕事は、着手前に担当と実施方法を書面で決めます。
| 仕事 | 担当の決め方 | 受け取る成果物 |
|---|---|---|
| 契約・負担額の資料収集 | オーナーが手元の資料を用意し、管理会社が保管分を確認 | 契約書一式と不足資料の一覧 |
| 比較する賃料資料の整理 | 管理会社に対応可否と調査範囲を確認 | 比較条件・出典・調査時点を記した資料 |
| 提案の伝達 | 貸主が文面を確認し、管理会社が伝達できる範囲と担当を決定 | 送付した文書と到達の確認記録 |
| 借主の回答・入金の記録 | 受付担当と家賃管理担当の情報をまとめる担当を決定 | 回答原文・面談等の記録・入金明細 |
依頼時には、報告を受ける方法と時期も書面に残します。追加提案や条件変更を求められた場合は、回答前にオーナーへ確認する手順を担当者と決めます。
契約全般の確認項目は、管理委託契約書の読み方を参照してください。今回依頼する仕事は、該当する契約条項を添えた依頼一覧にまとめます。
対立が続いたら専門家への相談を検討する
貸主の提案を伝える連絡業務と、紛争の代理交渉は区別します。標準管理受託契約書や管理委託契約の存在だけで、増額交渉の包括的な代理権があるとは判断しません。
根拠や特約の解釈で対立したら、双方の主張を並べて弁護士に相談します。通知の意味や効力も争われている場合は、追加の通知案を送付前に確認してもらいます。
賃料の評価に専門的な検討が必要な場合は、不動産鑑定士への相談も検討します。弁護士と相談目的を確認し、評価の対象と時点を示して依頼範囲を決めます。
専門家への依頼時は、助言だけか、交渉や手続の代理も含むかを見積書・委任契約書で確認します。管理会社には資料提供の担当を指定してもらい、相談結果を共有する窓口も決めます。
04合意できない場合の相談準備を進める

契約書・送付資料・回答・入金記録をまとめる
収集した資料を相談先に渡せるよう、次の区分で目次を付けます。経過の一覧には出来事の日付と資料名を記し、該当する原文を参照できるようにします。
- 契約関係:適用を確認したい条項に印を付け、特約や合意書の参照先を記します。
- 根拠関係:希望額を支える資料と、まだ裏付けを確認できていない事項を分けます。
- 協議関係:借主に送付済みの版と内部検討用の版を区別し、送付日を記します。
- 入金関係:対象月ごとに請求額と入金額を照合し、差額が生じた月を示します。
相談時には、オーナーが求める金額と開始時期を別紙で伝えます。変更を検討できる条件も書き添え、資料による裏付けと希望条件を分けて説明します。
支払いの扱いと調停等の手続を専門家に相談する
弁護士には、送付した文書が増額請求として扱われるかを確認します。到達の記録も示し、請求の効力と増額が認められる場合の適用時期を相談します。
従前賃料の受領について借主へ伝える文面と、差額の記録方法も確認します。精算が必要になる場合に備え、対象月ごとの不足額と利息の計算方法を尋ねます。
協議を続ける場合と調停等へ進む場合について、必要な資料と費用を尋ねます。訴訟を考える場合は調停との手続上の順序も確認し、次の対応と担当を決めます。
合意に至った場合は、新しい賃料と適用時期を合意書案に記載します。過去の対象月に差額があるときは精算額と支払方法も記し、双方で内容を確認します。
05当社でできること・できないこと
できること
- 管理をお引き受けする(全国/管理料は月額賃料の5%・税別・最低管理料なし)
できないこと
- 現地・室内を見ずに、実際の賃料を確定させること
- 空室が必ず埋まると保証すること
- 借主が家賃の増額に応じると保証すること
その修繕費が何か月で回収できるか、先に整理できます
お預かりした物件情報をもとに、いま何が起きているか、どこまで手を入れるべきか、持ち続けるか売るかまで整理して、A3一枚にしてお送りします。費用はかかりません。
LINEで管理の相談 管理のご依頼をいただかなくても構いません。対応エリアは全国です。区分マンション・戸建ては全国どこでもご相談いただけます。一棟は清掃・巡回・修繕の手配先を組んでから管理を開始します。[object Object],[object Object],業務の範囲・報酬・報告の頻度は管理委託契約書によって異なります。実際の判断はご自身の契約書をご確認ください