物を一定期間占有すると、その物の権利を取得することができます。これを取得時効といいます。
地上権・地役権などの物権については当然に取得時効が成立しますが、債権である賃借権は取得事項の対象にはならないと考えることもできます。しかし、不動産賃借権については不動産を占有する権利があるため、取得時効が成立するものとした判例が出ています。
この場合、賃借権の取得時効を主張する者は「自己のためにする意思」を持ち、権利を行使することが必要となります。
自己のためにする意思とは、不動産を使用収益するという意思(賃借の意思)です。
権利を行使するとは、「賃借の意思にもとづいて不動産を使用収益し、その使用収益が賃借の意思にもどつくものであることが客観的に表現されていること」という解釈です。
例えば、Aさんが自称代理人のBさんと土地貸借契約を締結し、その土地に建物を建築して、継続的にBさんに地代を支払った事例について、判例は地代支払いという事実を重視して、Aさんが土地賃借権を時効取得することを認めています。
占有開始時に、「他人のものと知っていた」(自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した)場合は20年、「他人のものと知らなかった」(自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかった)場合は10年で取得時効が認められます。