夫婦名義での不動産購入〜知っておきたいメリットとリスク

不動産購入を検討する際の選択肢となる「夫婦名義」。

メリットだけでなく、デメリットもありますので気をつけてください。

本記事では、夫婦名義の基本的な概念から、具体的な購入ケース、メリット・デメリット、慎重に検討すべきケース、そして名義変更の手続きについて詳しく解説します。

夫婦のライフプランや資金計画に応じて、最適な選択をするための参考にしてください。

不動産を購入する際、その名義の選択肢は「単独名義」と「共有名義」に分かれます。

「単独名義」は、物件の購入者1人の名義で「共有名義」は、複数の名義人がそれぞれの出資割合に応じて所有権を持つ形態です。

つまり、夫婦名義とは「不動産の所有権を夫婦で共有すること」を指します。

なお、夫婦が共同で一つの住宅ローンを借り入れる「連帯債務名義」もありますが、これも「夫婦名義」と呼ばれるケースがあります。

夫婦名義で不動産購入するケースの例

夫婦それぞれに住宅ローンを借りて、不動産購入するケース

夫婦がそれぞれ別々に住宅ローンを借り入れ、共同で不動産を購入します。いわゆる「ペアローン」です。

ペアローンで不動産を購入することで、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けることが可能です。

また、夫婦それぞれの収入に応じてローンの返済計画を立てることができるため、返済の負担を分散させることができます。

なお、出資額に応じて、夫婦それぞれの持分割合が変わります。

妻が頭金を出して、夫が住宅ローンを借りるケース

妻が頭金を出し、夫が住宅ローンを借りる場合、夫婦の出資割合に応じて不動産の所有権が分配されます。

例えば、妻が800万円の頭金を貯金から、夫が3600万円の住宅ローンを借りて、夫婦名義で物件を購入した場合、持分割合は「20%:80%」となります。

なお、妻が頭金を出したにもかかわらず、夫の単独名義にすると、頭金が「夫への贈与」と見なされて、贈与税が課税される可能性があります。

連帯債務型で住宅ローンを借りるケース

連帯債務型では、夫婦が共同で1つの住宅ローンを借り入れます。

つまり連帯債務型では、夫婦の収入を合算してローン審査を受けるため、借入額も大きくなる可能性があり、より高額な不動産購入が実現します。

ただし、連帯債務者が負う債務は、主債務者と同等になるためご注意ください。

夫婦名義で不動産購入するメリット

夫婦名義で不動産を購入することには、多くのメリットがあります。

ここでは、代表的なメリットについて詳しく見ていきましょう。

住宅ローン控除を夫婦で受けられる

夫婦それぞれが住宅ローンを借りる場合、控除もそれぞれに受けることができます。

これにより、税負担が軽減できるケースがあります。

売却時の特別控除を夫婦で受けられる

不動産を売却する際、夫婦それぞれが特別控除を受けることができます。

具体的には、自宅を売却した際、3,000万円までの売却益については譲渡所得税が非課税となります。(3,000万円特別控除)

夫婦名義の場合、それぞれが3,000万円特別控除が適用され「合計6,000万円の控除」を受けることができます。

ローンの借入額が大きくなる可能性がある

夫婦で共同でローンを組むことで、借入額が大きくなる可能性があります。

例えば、夫婦それぞれが年収500万円の場合「合算して1,000万円の年収」としてローンの審査を受けることができます。

これにより、単独名義と比較して、より高額な不動産を購入することが可能です。

相続税の節税になる

夫婦名義にすることで、相続税の節税効果が期待できます。

具体的には、夫の死去などで相続が発生した際、不動産の評価額が持分に従って分散されます。

例えば、夫婦それぞれが持分50%ずつ所有している場合、夫の持ち分(50%)のみが課税対象となり、単独名義と比較して、相続税の節税となります。

夫婦名義で不動産購入するデメリット

夫婦名義で不動産を購入することには多くのメリットがある一方、デメリットも存在します。以下に、注意すべきポイントをいくつか挙げます。

一方の意見だけでは売却できない

夫婦名義の不動産は、夫婦双方の同意がなければ売却することができません。

例えば、離婚時に一方が売却を希望しても、もう一方が「住み続けたい」などの理由で同意しない場合、売却が難しくなります。

このように夫婦名義では、不動産売却の際にトラブルが発生する可能性があります。

財産分与の処理が面倒になる

夫婦名義の不動産は、離婚時に財産分与の処理が複雑になることがあります。

婚姻期間の長さによっては、持分割合に応じて財産分与されるとは限らないためです。

また、そもそも夫婦の別居が金融機関との契約違反に当たるケースもあるなど、財産分与の処理が面倒になるケースがあるのです。

住宅ローンを借りる諸費用が割高になる

夫婦で共同でローンを組む場合、諸費用が割高になることがあります。

例えば、ペアローンは、2つのローン契約のため、印紙代や手数料が夫婦それぞれに発生します。

これにより、1つのローン契約(連帯債務型)と比較して、 諸費用が多くかかります。

相続によって親子共有名義になる

夫婦の一方が亡くなった場合、相続によって親子共有名義になることがあります。これにより、相続手続きが複雑になることがあります。

例えば、夫が亡くなり、妻と子供が共有名義になる場合、相続税の計算や名義変更の手続きが必要です。

贈与税が発生するケースがある

夫婦間での不動産の持分移転により、贈与税が発生することがあります。

特に「登記上の持分割合と購入額の割合が違うケース」では、差額が贈与と見なされ、110万円を超える部分に贈与税が発生する可能性が考えられます。

夫婦名義での不動産購入を、慎重に検討すべきケース

不動産購入において、夫婦名義にすべきかどうかは、慎重に検討しなければなりません。

以下、慎重に検討すべき具体的なケースをご紹介します。

住宅ローン返済期間内に退職・休職の可能性があるケース

住宅ローン返済期間内に夫婦のいずれかが退職・休職する可能性がある場合、贈与税が発生する可能性があります。

具体的には、退職・休職した人に変わって、一方が返済を引き継ぐと、事実上の贈与と見なされる可能性があるためです。

ローン期間中に「夫が定年退職を迎える」「妻が出産・育児休業を取る」などの予定がある場合は、夫婦名義にすべきか慎重に検討する必要があります。

多くの相続人がいるケース

相続人(財産を相続する権利のある人)が多くいる場合、夫婦名義にしない方が良いケースがあります。

夫婦の死亡によって、物件の名義人がどんどん増え、処分や管理が難しくなる可能性があるためです。

子供や親族の数が多い場合などは、物件を夫婦名義にすべきか、慎重に検討しましょう。

夫婦名義の解消・変更はできる?

夫婦名義で購入した不動産の名義を変更したり解消したりすることは可能なのでしょうか?ここでは、その手続きについて解説します。

住宅ローンが残ったままの名義変更は、難しい場合も多い

住宅ローンが残っている場合、名義変更は難しいことが多いです。

名義変更には、金融機関の承認が必要となりますが、金融機関が承諾しないケースも少なくないからです。

ただし、実際には、ローンの状況や金融機関の考え方ごとに対応は異なります。

住宅ローン完済済なら、お互いの同意で名義変更できる

住宅ローンが完済済であれば、夫婦双方の同意により名義変更が可能です。この場合、比較的簡単に手続きを進めることができます。

例えば、夫が持分を妻に譲渡する場合、法務局で必要書類を作成の上、所有権移転登記の申請を実施します。

まとめ

夫婦名義での不動産購入には、メリットとデメリットがあるため、慎重に検討して決定してください。

名義変更したい場合や不明点があれば、司法書士や不動産会社にご相談ください。

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