空き家問題解決!不動産売却のステップ・注意点を徹底解説

管理や維持は大きな負担となることがある「空き家」。

空き家を放置すると、固定資産税や維持管理費がかかり続け、さらに犯罪や不法侵入のリスクなど、さまざまな問題が発生する可能性があります。
そこで検討したいのが「空き家の売却」です。

本記事では、空き家を売却するメリットや方法、税金・諸費用、売却時の負担を減らす方法、注意点などについて詳しく解説します。

総務省の調査(令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果)によると、2023年10月1日時点で、 日本国内のトータルな住宅数は6502万戸です。

そのうち、空き家数は「900万戸」(賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家は385万戸)と、過去最高の数値となっています。

空き家が増える背景には「少子高齢化・相続問題・家族形態の変化・固定資産税の安さ」
などがあると考えられます。

空き家を売却するメリット

空き家を売却することには多くのメリットがあります。

逆に、空き家を所有し続けることは様々な負担・リスクを増やすことになるため、活用予定がなければ、売却を検討すべきです。

はじめに、空き家を売却するメリットについて確認していきましょう。

固定資産税の支払いや維持管理費がなくなる

空き家を所有していると、毎年の固定資産税や維持管理費がかかります。

固定資産税は不動産を所有していると必ず発生するほか、建物の傷みを防ぐための維持管理費も必須です。

長期間空き家を所有している場合、これらの費用が積み重なり、経済的な負担は増大しますが、適切かつ早期に空き家を売却することで解消されます。

一部の空き家は「固定資産税の優遇措置」が終了

2023年の法改正(空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案)により、一部の空き家に「固定資産税の優遇措置」が適用されなくなります。

具体的には、倒壊の恐れが高い「特定空き家」に加えて、特定空き家となる可能性のある「管理不全空き家」も、固定資産税の優遇措置が受けられません。

これにより、特定空き家や管理不全空き家に該当する物件には、これまでの「最大6倍」の固定資産税がかかる恐れがあります。

物件の管理負担がなくなる

例え人が住んでいなくても、空き家の管理には手間がかかります。

定期的な清掃や修繕、点検ほか、雑草の刈り取り・庭木の剪定なども必要です。

空き家を適切に管理していないと、悪臭が発生したり、雑草や木が隣の敷地まで伸びるなどして、苦情の原因となります。

特に、遠方に住んでいる場合や多忙な生活を送っている場合、空き家の管理は大きな負担やストレスとなりますが、売却することで、これらの管理負担から解放されます。

犯罪や不法侵入の心配がなくなる

空き家は、犯罪や不法侵入のリスクを高めます。

空き家が放置されると、不法占拠や窃盗、放火などの犯罪が発生する可能性が高まり、地域の治安に悪影響を及ぼす恐れがあるのです。

実際に、2020年から2024年にかけて、空き家に残った金品を狙う窃盗事件は「2.5倍」に急増しています。

犯罪や不法侵入のリスクを避けるためにも、空き家の売却は有効な手段です。

近隣からの苦情や迷惑の心配がなくなる

空き家を放置すると、近隣住民に迷惑をかけ、苦情が寄せられる可能性があります。

例えば、空き家が荒れ果てていると、景観を損ねるだけでなく、すでにご紹介したように草木が隣の敷地まで伸びたり、害虫・害獣の発生源となることがあります。

さらに、空き家の破損・倒壊などによって第三者に怪我を負わせた場合、賠償責任が生じます。

最悪の場合、数千万円〜数億円の賠償となる恐れもありますが、空き家売却でこのようなリスクは回避できます。

資産価値が下がらないうちに現金化できる

空き家の資産価値は、時間の経過とともにどんどん下がります。

そして、空き家を放置して建物の老朽化が進むと、解体が必要となり、家が建った状態の売却と比較して余計な費用がかかります。

一方、相続などで家を引き継いだ場合は、資産価値が下がり切る前に、できるだけ早く売却することで現金化できる可能性もあります。

空き家を売却する6つの方法

空き家を売却する方法には、主に、以下の6つがあります。

  • そのまま売却する
  • 更地にして売却する
  • リフォームしてから売却する
  • 不動産会社に買い取ってもらう
  • マッチングサイトを利用して売却する
  • 個人間売買で売却する


それぞれの方法に特徴があるため、ご自身に合った方法を選ぶことが重要です。

そのまま売却する

空き家をそのままの状態で売却する方法です

築20年前後以内なら「中古住宅」、それ以上の築年数であれば「古家(ふるや)付きの土地」として売却できます。

リフォームや解体の手間がかからず、費用の持ち出しがない点は大きなメリットと言えるでしょう。

また、相続した空き家が売却できた場合、身内での分配も簡単にできます。

リフォームしてから売却する

空き家をリフォームしてから売却する方法です。

リフォームによって物件の価値を高めることで、高値で売却できる可能性があります。

内装・外装や設備を新しくすることで、物件の魅力が高まり、買い手の関心を引きやすくなります。

そのため「空き家を中古物件として売り出したが売れない」といったケースでは、その解決策となることもあるでしょう。

一方「リフォーム費用がかかること」「リフォームしても売れる保証はないこと」などは、デメリットと言えます。

更地にして売却する

空き家を解体し、更地にして売却する方法です。

空き家を解体することで維持管理費がなくなること、建物の老朽化などによる倒壊リスクがなくなることなどはメリットと言えます。

また「古家付きの土地」として売り出すよりも、スムーズかつ高めの費用で売却できる可能性があります。

一方、空き家の解体費用がかかることはデメリットです。具体的な解体費用は一概に言えませんが「100万円前後」以上はかかるとお考えください。

さらに、建物を解体することで、住宅用地の特例が適用外となり、固定資産税や都市計画税が高くなります。

「再建築不可物件」に注意!

空き家を更地にして売却する際は、「再建築不可物件」である可能性に注意が必要です。

再建築不可物件とは、建築基準法の「接道義務」を満たしていない土地のことを指します。

接道義務とは、建物を建てる際に、一定の幅の道路に接していなければならないという義務です。

再建築不可物件は、この接道義務を満たしていないため、建物を建て替えることができません。

再建築不可物件は、もともと購入希望者が限られるため、売却に時間がかかったり、希望する価格で売却できない可能性があります。

さらに建物を取り壊すと、新たな建物が建てられず、土地の価値が大きく下がる可能性があります。

なお、所有する空き家が再建築不可物件かは、物件があるエリアの役所で調べることができます。物件を更地にする前に、必ず役所で確認するようにしてください。

不動産会社に買い取ってもらう

不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。

買主を探す必要がなく、迅速に売却できるため、急いで現金化したい場合に適しています。また、買取に際して仲介手数料はかかりません。

一方、買い取り価格が市場価格よりも低くなることが多い点には、注意が必要です。

マッチングサイトを利用して売却する

インターネットのマッチングサイトを利用して売却する方法です。

マッチングサイトの代表格と言えるのが、自治体が中心となって運営する「空き家バンク」で、全国の空き家や空き地のマッチングを支援しています。 

空き家バンクへの掲載は無料で、多くの買い手にアプローチできるため、効率的に売却できます。

なお、空き家バンクを利用すると、スムーズに個人間取引できますが、価格交渉・契約・トラブル対応なども自分で行わなくてはなりません。

個人間売買で売却する

知人や友人など、個人間で売買する方法です。

市場価格にとらわれず自由度の高い取引が期待できるほか、仲介手数料がかからないため、コストを抑えることができます。

ただし、個人間売買では、契約書の作成や手続きに関する知識が必要であり、また、トラブルが発生するリスクもあるため、必要に応じて専門家を交えることが望ましいケースもあります。

空き家の売却にかかる税金・諸費用

空き家を売却する際には、各種税金や諸費用がかかりますので、以下で確認していきましょう。

各種税金

空き家を売却する際には、以下のような税金がかかります。

  • 譲渡所得税:売却益に対して課税される税金です。売却価格から取得費用や譲渡費用を差し引いた額に対して課税されます。売却額が取得金額を上回らない場合は、発生しません。
  • 登録免許税:空き家を相続して、ご自身の名義に変更する際に必要な「不動産の所有権移転登記」にかかる税金です。売却価格に応じて税額が決まります。具体的な計算方法は「固定資産税評価額 × 0.4%」です。
  • 印紙税:売買契約書に貼付する印紙にかかる税金です。契約金額に応じて税額が決まります。 

仲介手数料

不動産会社を通じて売却する場合、仲介手数料が発生します。

400万円以下の部分に対しては「18万円以内」、400万円を超える部分に対しては「売却価格の、上限3%」の仲介手数料がかかります。

その他の費用

このほか、売却に際して以下のような費用が発生する可能性があります。 

  • リフォーム費用
  • 解体費用
  • 相続登記で司法書士を依頼する場合の依頼料  など

売却時の負担を減らす方法

空き家を売却する際の負担を減らすためには、各種控除や特例、公的制度を利用することが有効です。

ここからは、空き家売却時の負担を減らす具体的な方法をご紹介します。

控除や特例を利用する

空き家の売却に際して、各種控除や特例を利用することで、税負担を軽減することができます。

例えば、相続した空き家をそのまま売却し利益が出た場合、譲渡所得3,000万円までの税金が控除されます。

また、自治体によっては、空き家の解体に対して補助金が利用できるケースがあります。

公的制度を利用する

空き家解体の補助金や、相続した空き家の特別控除のほかにも、以下のような公的制度が利用できます。 

  • 取得費加算:相続などした空き家を売却する際、条件を満たせば、相続税の一部を「取得費」に加算できます。
  • 10年超所有軽減税率の特例:10年を超えて所有した物件を売却する際、条件を満たせば 、譲渡所得税の税率が低くなります。

売買契約書・領収書をきちんと保管する

譲渡所得税を計算する際、空き家の取得費が証明できる書類がきちんと保管されていれば、大幅な節税となる可能性があります。

空き家の取得費が証明できる書類がない場合「売却額の5%」を取得費とみなしますが、これにより譲渡所得額が大きくなり、税負担も増えるケースがあるためです。

取得費が証明できる書類は「売買契約書や領収書」が該当しますので、しっかり保管してください。空き家を相続する可能性がある場合は、ご両親に書類を探しておいてもらいましょう。

自分たちで不用品を処分する

空き家の売却に際しては、家の中に不用品が残っているケースも少なくありません。

不用品の処分を業者に頼むと「産業廃棄物」として処理するため、処分費用が割高になるケースも多いです。

一方、自分たちで不用品を処分する場合は、家庭ごみとして捨てられる物も多いほか、使える物は売却することもできます。

例えば、リサイクルショップやフリマアプリなどを利用して、不用品を処分することで、空き家 売却で発生する税金・諸費用に充てることも可能です。

空き家を売却する際の注意点

空き家を売却する際には、いくつかの注意点があります。

ここからは、特に注意すべき2点について確認しましょう。

相続後は名義変更する

相続した空き家を売却するためには、物件の名義を相続した方(ご自身)に変更する必要があります。

物件の売却は、原則として物件の名義人のみです。

加えて2024年4月以降「相続登記が義務化」され、3年以内に登記していない場合は罰金(10万円以下)が課せられる可能性があります。

空き家を相続した場合、速やかに名義変更を行いましょう。

タイミングを考えて更地にする

空き家を更地にすると、固定資産税が上がりますが、適切なタイミングで更地にすることで、固定資産税が安いまま売却できます。

具体的には、固定資産税における物件の状態は「例年1月1日」に判断されるため「1月1日を過ぎてすぐ」に取り壊すことが望ましいです。

仮に、12月に入ってから物件を取り壊し、固定資産税が安いまま売却したい場合は、1ヶ月足らずの猶予しかありません。

売却がうまくいかない場合は「不動産会社の変更」も

相続などで空き家を所有し「今後住む予定がない」「活用する予定もない」という場合は、できるだけ早く売却を検討すべきです。

国も空き家問題の解決に乗り出しており、固定資産税の優遇措置が受けづらくなるなど、空き家を所有するデメリットやリスクもどんどん増えています。

そこで、スムーズな空き家売却が求められますが、現在の不動産会社の売却活動がうまくいっていないように感じる場合は「不動産会社の変更」を検討することも一つの方法です。

複数の不動産会社に相談し、信頼できる業者に依頼することで、スピーディーかつより良い条件で売却できる可能性があります。

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