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Toggle機械式駐車場とは
機械式駐車場とは、車を機械によって上下左右に移動させ、限られたスペースに効率よく駐車するためのシステムです。
主にマンションやオフィスビル、商業施設などに設置されていますが、小型のものであれば個人宅に設置されているケースもあります。
「管理組合向け調査の結果」(国土交通省)によると、マンションの駐車場の約32%が機械式駐車場です。
機械式以外の駐車場
駐車場の種類は、機械式駐車場の他に以下のものがあります。
- 平置き駐車場
一般的な駐車場で、平面に車が停められるタイプ。コストが比較的安価で、大型の車も駐車しやすいというメリットがあります。
- 自走式駐車場
自分で車を運転して駐車するタイプ。いわゆる立体駐車場ですが、駐車スペースが傾斜していて、とめにくいケースもあります。
機械式駐車場の現状
日本で初めて機械式駐車場が設置されたのは1960年で、1962年には日本橋高島屋にも設置されました。
その後、都市部の土地の有効活用や渋滞緩和という観点から、機械式駐車場の導入は増加します。
実際に「機械式立体駐車場の安全対策に係る経緯・現状」(国土交通省)の掲載データによると、機械式駐車場は出荷設置台数を伸ばし続け、1980年代後半より都市部で急速に普及しました。
しかし、2010年前後から、機械式駐車場の出荷台数は大幅に減少しています。
そして同時期より「機械式駐車場の平面化工事」の件数も増加しており、現在は「機械式駐車場離れ」のような状況が発生しています。
機械式駐車場の課題
それではなぜ、機械式駐車場離れのような状況が発生しているのでしょうか。
その背景には、以下のように、機械式駐車場における大きな2つの課題があります。
- 多額の維持費がかかる
機械式駐車場は1台あたり、月数千円ほどかかります。収容台数が多く、規模の大きな機械式駐車場ほど維持費がかかります。
- 駐車場利用者の減少
多額の維持費がかかっても、多くの利用者がいれば問題なく運営できる可能性もあります。しかし、現在は若者の車離れ、高齢ドライバーの免許返納などを背景に、駐車場利用者が減少しており、修繕積立金や管理費に反映されるケースが発生しています。
このような課題解決のため「機械式駐車場の平面化工事」を実施するケースも増加傾向を示しています。
機械式駐車場の5つの種類
機械式駐車場には 以下5つの種類があります。
- 地上2段式
- ピット2段式
- 昇降横行式
- 垂直循環方式
- エレベーター方式
それぞれに構造や特徴が違うため、1つずつチェックしていきましょう。
地上2段式
最も一般的なタイプで、上下2段に車が駐車されます。
個人宅に設置される機械式駐車場は、ほぼこのタイプです。
限られたスペースに2台の車が駐車できますが、上段の車は、下段の車を出した後でないと入出庫できません。
ピット2段式
地上と地下の2段に車が駐車されます。
地下に車を収納することで、下段の車を出さずに、上段の車の入出庫ができます。ただし、地下に収納する車については、大雨などによる浸水リスクもあります。
昇降横行式
車が上下に昇降し、横に移動して駐車します。駐車位置に関係なく、車の入出庫が可能です。
ただし、パレット(車を乗せる台)を複雑に動かすため、入出庫に長い待ち時間が発生する可能性もあります。
垂直循環方式
車が円筒形のタワー内で上下に移動し、回転して駐車位置に移動します。
全ての車が屋内に収納できるため、風雨などの汚れやいたずらが防げますが、駐車位置によっては入出庫に時間がかかります。
また、機械が作動する際に大きな騒音や振動が発生するケースがあります。
エレベーター方式
エレベーターのように、車を上下に移動して駐車します。
垂直循環方式より騒音の心配は少ない反面、垂直循環方式より構造が複雑で部品の点数も多いため、不具合が発生するリスクが高くなります。
機械式駐車場のメリット
機械式駐車場離れの状況は発生しているものの、機械式駐車場には、他の駐車場にはないメリットも複数あります。
ここからは機械式駐車場のメリットを確認します。
車を汚れや劣化から防げる
屋内型の機械式駐車場や、機械式駐車場の地下に収納する場合、雨風や直射日光から車を保護することができます。
また、動物のふん、子供のいたずらなども防げるため、車を大切に維持したい方には大きなメリットです。
盗難リスクが減る
屋内型の機械式駐車場や、機械式駐車場の地下や上段に収納する場合、車の出庫に時間がかかります。
つまり、犯罪者にとっても出庫しづらいため、車両盗難リスクが低減すると考えられます。
また、車が手の届きにくい位置にあるため、車上荒らしなどのリスク低減も期待できます。
他の車両とトラブルが起きにくい
平置き駐車場や自走式駐車場の場合「開けたドアが隣の車に当たってしまう」「幅寄せされて車が出しづらい」などのトラブルが発生する可能性があります。
一方、機械式駐車場は、車を決められた各スペースに収納するため、隣の車に接触する恐れがあまりありません。
また構造上、幅寄せして駐車することができないため、このようなトラブルの心配もありません。
平置きより駐車料金が安いケースも
機械式駐車場は、土地の有効活用ができるため、一般的な平置き駐車場に比べて駐車料金が安く設定されているケースもあります。
生活上の固定費を削減したい方には、注目すべきメリットと言えるでしょう。
機械式駐車場のデメリット
機械式駐車場には、魅力的なメリットもある一方、留意したいデメリットも少なくありません。
機械式駐車場のある物件に住む前に、そのデメリットを理解しておきましょう。
利用できる車両サイズに制限がある
機械式駐車場は、利用できる車両サイズに「車高、車幅、重量」などの制限があります。
パレット(車を乗せる台)の幅やによってサイズが厳密に制限されるため、平置き駐車場のように「車のサイズが少し大きいけれど、何とかと駐車できる」と言ったことが不可能なケースが多いです。
特に、近年は、ゆったりした高さに設計された軽自動車もあり「軽自動車であっても機械式駐車場に収納できない」という可能性もあります。
もしも、マンションの機械式駐車場が使えない場合、近隣の駐車場等を探して契約する必要があります。
すぐに入出庫できない
機械式駐車場の入出庫には時間がかかるケースがあります。
具体的には機械の動作時間や、他の車の出庫待ちなどで、時間がかかる可能性が考えられます。
そのため「朝の通勤で急いでいる」「緊急に子供のお迎えが必要になった」「忘れ物をした」などの場合にも、すぐに入出庫できない場合があります。
また、寒い日や暑い日、雨が降っている時などにも、不便を感じやすいでしょう。
人身事故のリスクがある
機械に挟まれる、落下するなど、機械式駐車場は平置き駐車場にはない人身事故の発生リスクがあります。
後に詳しく解説しますが、機械式駐車場における死亡事故も発生しているため、利用の際は細心の注意を払わなければなりません。
大雨・台風などによる浸水リスクがある
地下に駐車する場合、大雨や台風などにより、車が浸水するリスクがあります。
機械式駐車場にはもちろん排水設備はあるものの、排水が間に合わないほどの雨量に達した場合は車が水没し、故障の原因などになる可能性が考えられます。
近年は、ゲリラ豪雨などの事例も増えており、機械式駐車場を利用する際の無視できないデメリットと言えるでしょう。
停電すると利用不可
機械式駐車場の稼働には電気が必要です。
そのため停電時には、機械が作動しなくなり、復旧まで車が使えなくなるリスクがあります。
センサーにより停止するケースがある
車両の異常や障害物を感知すると、安全のためセンサーが作動し、機械が停止することがあります。
機械式駐車場の安全確保のためには必要な機能ですが、センサーが頻繁に作動する場合、あるいは誤作動しやすい場合などは、車の入出庫がスムーズにできなくなります。
分譲マンションなどでは修繕積立費が高くなる可能性も
機械式駐車場のついた分譲マンションを購入する際は、機械式駐車場の老朽化や耐震補強工事の必要性などに伴い、修繕積立費が高くなる可能性があります。
仮にマンションの機械式駐車場を使用しなくても、修繕積立費や管理費は発生すると考えられるため、ご注意ください。
機械式駐車場を利用する際の注意点
機械式駐車場を利用する際は、 何よりも「事故」に気をつけなければなりません。
事故を起こさないことはもちろんですが、緊急時の連絡先などは事前に確認しておきましょう。
機械式駐車場の重大事故の半数は「マンション駐車場」で発生
機械式駐車場の重大事故の多くは、マンションの駐車場で発生しています。
「機械式立体駐車場の安全対策に係る経緯・現状」(国土交通省)によると、機械式立体駐車場における死亡・重傷事故の発生場所の50%(※)が「マンション駐車場」でした。
また、死亡・重傷事故の内訳としては「装置内に人がいる状態で機械が作動」がおよそ40%と最多でした。
(※平成19年度〜平成25年度までデータ)
周囲に人がいないことをよく確認する
機械式駐車場を利用する際に最も大切なのは「周辺に人がいないことをよく確認すること」です。
特に小さなお子さんがいらっしゃるご家庭、ファミリー層が多く住むマンションなどでは、常に細心の注意を払って、操作や入出庫することが求められます。
どんなに急いでいても、安全確認を怠ることは避けてください。
まとめ
機械式駐車場は、土地の有効活用という点で非常に魅力的なシステムです。
一方で、車両のサイズ制限や入出庫時間などのデメリットがあり、多額の維持費や駐車場利用者の減少などの課題も抱えています。
機械式駐車場を利用する際は、メリットとデメリットをしっかりと理解し、安全に利用することが重要です。
この記事を書いた人
宅地建物取引士、管理業務主任者、ファイナンシャルプランニング技能士、簿記、上級ウェブ解析士など様々な分野の資格を保有している編集部スタッフが「暮らし」に役立つ知っておきたい情報をお届けします。